== SPIRIT DOLL Nymphaea ==

深窓を覗く

最近、ゲーム用のライトノベル風テキストは沢山書いていたけど、普通の小説っぽいものを書いていなかったので、書いてみることにした。
しかし一発ネタにしかならなかった。

えるしっているか わたしは ギャグっぽいのがすきだ

寒いノリと、BLっぽい(!?)のが許せる方だけどうぞ。タイトル詐欺です。
これはひどい


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長いので、たたみます。「Read more」をクリックしてお読みください。


『深窓を覗く』



私、藤村宮子が此の「聖アガタ女学園」に入学したのは、ほんの二週間前のことです。私は両親に言われるが儘にこの学園の門を潜り、此処の生徒になったものですから、ここがまさか基督教系の学校だとは知らずにおりました。アガタなんて名前だから、阿形(あがた)なんていう人が作った学校何だろうとか、そんな風にしか思っておりませんでした。そのことを、新しくできた友人に話したら、笑われてしまいましたが。



ですから週に一度の、チャペルという所に集まっての礼拝に慣れていなくても、仕方のないことだったと思います。
私の家には神棚がありますが、そんなことは気にせず、右に倣えで十字架に向かいお祈りをします。私には、ロザリオが、家の仏壇に置いてある数珠にしか見えません。そう云えば私の家には神棚も仏壇もあるのだワ、不思議ね、とか思いながら過ごしていると、いつの間にか礼拝の時間は終わっておりました。



その日の昼休みに、友人と庭へ出ました。大きな煉瓦造りの校舎で四方を囲まれた、少し窮屈な感じのする庭です。それでも手入れが行き届いているせいでしょうか、沢山の花の咲き乱れる庭は、私たちの心を惹きつけてやみません。
不図、顔を上げてみますと、大きな窓が見えました。あそこは図書室がある場所です。黒い窓枠の内側に、まるで精緻を極めた切り絵のような、美しいシルエットが映りこんでおりました。それはヨクヨク見ますと、とても長い真っ直ぐな黒髪の生徒が、窓辺に立って読書をしている姿なのでした。

「宮子さん、どうなすったの」

友人が声をかけてくるので、私は窓を指差しました。

「マァ、あれは弥生紗霧サンね。この学校の生徒の中でも、特に良家のご息女だそうよ。お父様が大会社の社長だとか、どっかの大地主だとか、元華族だとか、デタラメな噂を沢山耳にしたワ。とにかく家が大層なお金持ちなんだそうヨ。大豪邸に住んでらして、所謂“深窓の令嬢”として、とっても有名らしいの」

なんともデタラメな噂ばかりでしたが、あそこで本を読んでいるのが有名な人なんだというのが分かりました。
彼女は形の良い切れ長の瞳で、本を見つめております。細い指先が、ぱらりと頁を捲ります。頬は薔薇のように赤く、唇も同じ色をしております。これでは、ぬばたまの色をした琺瑯の瞳に見つめられ、白磁の指に触れられている本が、彼女に惚れこんでしまいそうではないですか。嗚呼、もし此の國にコッペリア人形があったとしたら、彼女のような美しい容貌をしていたことでしょう。
肩に垂れた黒髪が静かに揺れ、切り絵のようなシルエットは、やがて窓から姿を消しました。

「まだ図書室に、いらっしゃるのか知ら」

「マァ、宮子さんったら無謀な……。あのような人が、まだまだ礼儀のなってない新入生とお話しなんて、してくださるもんですか」

友人はそう云いましたが、私は図書室へ行ってみることにしました。



図書室に向かいますと、其処に紗霧さんはおりました。
窓の近くの机に向かって、長いまつ毛を伏せ、どうやら眠っているようでした。こうして直に見てみますと、ただの午睡ですら、絵になるような美しさです。
机の上には、栞が挟まれた本が置いてありました。華やかな色の、お洒落な表紙です。マァ、どんな本なのか知ら――私は興味があって、その本をもっと近くで見てみました。

『Jの総て』

その題名を見た瞬間、私は飛び上がりそうになってしまいました。
作者の名前は、「中村明日美子」とあります。
表紙には、とろけるような曲線で描かれた艶めかしい美少年二人の姿があり、その長い手指は薔薇の蔓が絡むかの如しです。
まさか、基督教が禁じているはずの同性愛を扱った本を、コンナ場所で目にするとは思いもよらず、私は吃驚してしまいました。
私は思わず、ウトウトと眠る彼女に話しかけていました!

「弥生紗霧さん、ネェ、起きてくださいな!」

私の声で、彼女はすぐ目を覚ましました。見知らぬ下級生から急に話しかけられ、混乱しているようです。

「貴女、大きな声を出すのは、一寸よして頂戴。私に、何か用事でもあるのか知ら」

私が無言で本を指差しますと、彼女は少し恥ずかしそうにして、本をいそいそと鞄に仕舞いこんでしまいました。

「……図書室に、誰も居なかったものだから、つい読んでしまったの。お願い、誰にも云わないで頂戴。私、どうされるか分からないわ」

基督教では、同性愛は禁じられているのです。それなのに、学校での礼拝に参加している彼女が、そのような本を愛読しているとなれば、それは神への冒涜に近いものがあるでしょう。私が此の事を誰かに告げれば、大事になるには違いないのでした。
しかし私は、「いいえ、誰にも告げません」と言い切りました。

「中村先生がお好きなのですか。それなら『同級生』はお読みになりまして? 個人的には『ばら色の頬のころ』が好きで、メインの二人よりもジェリーとユージーンの話が好きなんです。『Jの総て』は絵が少し古いですけど、まるで映画のような話の展開が素敵で――」

気が付けば私は、自分の趣味嗜好を全て曝け出してしまっておりました。本当ならば、今すぐに教会の懺悔室へ走って行って、全てを懺悔しなければならないほどの愚行であったと思います。ですが、紗霧さんがキョトンとしてから、急に優しく微笑まれたので、私は正気に戻って、そして紗霧さんの言葉を待ったのです。

「アラアラ、他に誰も居ないからって、全てを曝け出しすぎよ」

彼女は、私が思っていた以上に、子供らしく屈託なく笑うのでした。

「貴女も、こういう本がお好きなのネ。こういうのって、内容がとってもイカガワシイのに、未成年でも買えてしまうでしょう。そしてとっても面白いから……私、虜になってしまって、こうやって毎日鞄に入れてあるのよ」

なんと彼女は、私と同類であることを告白しました。

「ネェ貴女、お名前は何ておっしゃるの?」

「藤村宮子です」

「そう。では今日の放課後、二人で甘味処にでも行って、中村先生の作品について語り合うのはいかが? イヤと言うなら、無理強いはしないけれど」

「マァ、本当ですか」

嗚呼、何て素敵な誘いでしょう! 私は「はい」とすぐに返事をしておりました。そして、次いでこう云いました。

「私のおすすめの甘味処があります。秋葉原に、『ゴチック・ギムナジウム・カフェー』というコンセプトカフェーがあって、毎日大盛況ですの。『トーマの心臓』に出てくるような――否、フランス映画の『悲しみの天使』のイメージに近いのか知ら――とても素敵な所でしたわ。密会の場所である温室のように鉢植えが沢山置いてあって、パイプオルガンまで飾ってあるんです」

すると紗霧さんは、切れ長の瞳を大きく見開きました。

「嗚呼、吃驚した。ネェ宮子さん、誰にも秘密よ。――そのお店、私の家が経営しているの」

静かな図書室に、私の悲鳴が響き渡ったことなんて、云うまでも無いでしょう。



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ちょっと昔が舞台なのかと思ったら、現代かよ!! ←ツッコミ所
あくまでも「カフェー」。
「超お嬢様が実は腐女子」っていうネタをずっとやりたかった。それだけ。


ちなみにこれを書く前、私は夢野久作の『ドグラ・マグラ』を読んでいた。
普段はこんな文体じゃ書かないよ、流石にねー(;^ω^)
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